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人が変わる瞬間に思うこと

私はこれまで、多くの社員や経営者の方々が変わる瞬間を見てきました。

 

目の輝きが変わる。

言葉が変わる。

行動が変わる。

 

そして人生そのものが変わっていく。

そんな場面に何度も立ち会わせていただきました。

では、人は何をきっかけに変わるのでしょうか。

 

今月は、私自身の経験から、そのことについて少しお話ししたいと思います。


私がソニー本社へ転勤した頃のことです。

何か自分の中に誇れるものを身につけたいと思い、スキー準指導員資格の取得を目指しました。

ソニーのスキー部に入り、仲間たちと練習を重ねながら挑戦を始めました。

 

指導員試験は年に一度。

3日間にわたり、実技や理論など9種目の試験が行われます。

私は必死でした。

 

通勤電車では立ったままバランストレーニング。

帰宅後は筋力トレーニング。

休日は朝から夕方までスキー場。

そしてナイターにも通いました。

 

しかし結果は、

1年目不合格。

2年目不合格。

3年目も不合格。

 

若い仲間たちは次々と合格していく。

私は焦りと葛藤の中にいました。

 

そして4年目。

「これが最後かもしれない」

 

そう思い、日本トップと言われるデモンストレーター兼インストラクターの先生の門を叩きました。



先生は私の滑りを一本だけ見て言いました。

 

「北川君の問題は技術じゃない。」

「変化への向き合い方にある。」

 

そう言われました。

続けて先生はこう言いました。

 

「ここ数年でスキー技術は大きく変わった。」

「でも君は心のどこかで、昔のやり方を手放せずにいる。」

「本当に新しい技術を信じ切れているかな?」

 

私は言葉を失いました。

まさにその通りだったからです。

 

新しいことを学ぼうとしている。

 

でも心の中では、

 

『本当にこれでいいのか』

『昔のやり方の方が正しいんじゃないか』

 

そんな思いが残っていました。

だから教わったことを徹底してやり切れない。

 

中途半端になる。

結果として、

 

何が良くて、

何が悪いのか、

 

自分で答え合わせができなくなっていました。

 

そして迷いが迷いを呼び、

 

どんどん迷宮に入っていったのです。


その時、先生が私にかけてくれた言葉があります。

私は今でも忘れることができません。

 

「北川君、変わろうとしなくていい。」

「人は変われと言われると怖くなる。」

「だから変わらなくていいんだ。」

 

私は驚きました。

すると先生は続けました。

 

「今まで身につけた技術は左側の引き出しに入れておこう。」

「それはなくならない。」

「必要になればいつでも取り出せる。」

「だから安心していい。」

 

「そして今度は右側の空っぽの引き出しを開けてみよう。」

 

「そこに新しい技術や考え方を入れていけばいい。」

「引き出しは多い方がいいよね。」

 

その瞬間、

肩の力が抜けました。

変わるのではなく、

新しい引き出しを増やす。

 

その考え方が私を救ってくれたのです。


そこから私は変わりました。

 

正確には、

変わろうとすることをやめました。

 

代わりに、

教わったことを素直に受け入れ、

まずは徹底してやってみる。

 

それだけに集中しました。

すると、

 

できたこと

できなかったこと

 

その原因

次にやるべきこと

 

が少しずつ見えるようになりました。

 

結果として、

4年目にして無事に準指導員資格に合格することができました。

もちろん合格は嬉しかった。

 

でもそれ以上に大きかったのは、

変化への向き合い方を学べたことでした。


私はその後、多くの人材育成や組織づくりに携わってきました。

そして今でも思います。

 

人が変わる瞬間には共通点があります。

それは才能でも能力でもありません。

 

まず、

素直であること。

 

そして、

教わったことを徹底してやってみること。

 

この二つです。

知識だけでは人は変わりません。

理解しただけでも変わりません。

 

素直に受け止め、

行動し、

やり切る。

 

その先に初めて変化が生まれます。


最近、私は「顧客視点マーケティング」という言葉をよく使います。

顧客視点も同じです。

 

自分の考えを正当化するのではなく、

お客様は何を感じているのだろう。

 

なぜそう思うのだろう。

そう素直に見つめるところから始まります。

 

そして実際に行動し続けることで初めて見えてくるものがあります。


人が変わる瞬間。

それは特別な才能が開花した時ではなく、

新しい引き出しを開く勇気を持った時なのかもしれません。

 

私自身、今でもそう思っています。


感性とは体験の数。

今月も新しい引き出しを一つ増やせるよう、

新しい体験を重ねていきたいと思います。


今回の一言

素直さは、変化の入口。
徹底は、成長の入口。